★北米釣り紀行〔5〕

 

Written by leon

 

 

 

西海岸の日系アングラー達

 

事もあろうに「アメリカでグレ釣り」などと言う、予想だにしなかった展開に導いてくれたのは、やはり、「日本人」だった。

 

彼は3世とか4世とかではなく、若き日に単独で北米に渡り、色んなアルバイトを繰り返した挙句とうとう日本人向けの「不動産屋」を営む事に成功し、現在は永住権を手に入れてロングビーチに住まいを持つ立派な日系アメリカ人だ。

 

「グレッグ山本」と言う米名の彼は穏やかな物腰と優しい風貌で、年齢は50代の前半だったが本当に良く一緒に遊んでくれた。

 

ただし彼は近場のグレ釣りがほとんどで、ルアーFが主体の僕とは少々趣向が違い、仕事が終わってから日暮れまでのパロスバーデスでの釣りのみの友人だった。

 

 

もっとルアーFの情報が欲しかった俺は、インターネットでロス近郊の釣り好き日本人を探す事にした。

 

ある日目に留まったのは「日本人向けフィッシングガイド」のHPだった。

 

おもに西海岸でのバスフィッシングガイドや、当時始まったばかりのメキシコ「レイクバカラック」へのバスFツアーを販売している会社だ。

 

 

早速社長である「ポール平川氏」にメールを送ると、驚いた事に商売ではなくていきなり個人的な釣りに誘ってくれた。

 

先ずは手近な釣りでと言うことで、レドンドから出港する「サンダウンスペシャル」と言う、日本流に言うなら「半夜釣り遊漁」とも言うべきスタイルの乗合船の釣りだ。

 

夕方5時出港で、小一時間ほど走り、沖合いにある「瀬」にアンカーリングして9時にストップフィッシングと言うスタイルで料金は15ドル。

 

なかなか手軽で釣果も良く、かなり人気の船らしい。

 

 

待ち合わせの時間に港へ行くと、ポールがすぐに見つけて手を振ってくれる。

 

「加来さ~ん!?」「こっち、こっち!」

 

少し心配していたが、完全なイントネーションの日本語(笑)

 

 

彼は予想外に若く、小柄だが鋭い雰囲気を持ち、内に秘めたエネルギーが隠しようもなく吹き出ていた。

 

年齢を聞くと32歳で横浜の出身。ロスの大学で勉強をし、そのまま居ついているのだそうな。

 

彼はフィッシングガイドだけではなく、レストランや宅配弁当もてがけ、アメリカンドリームを夢見る元気一杯夢一杯の青年実業家でもあった。

 

 

横にもう一人日系人が立っていた。

 

こちらはポールと違って至極穏やか風貌の持ち主で、どことなく気品を感じさせるなかなかの美青年。

 

 

「ハリーです、よろしく」

 

 

と静かに差し出した手と握手をする。

 

ハリーとはこの後何度と無くバスフィッシングに同行する事になるが、彼との思いで釣行は又の機会に書いてみたい。

 

 

彼の職業はナント「大使館員」だった。

 

性は「櫛笥町」と言うから、恐らく公家・華族の血統なのだろう。

 

職業と言い、かもし出す雰囲気は「本物」であったわけだ。

 

 

船は程なくしてポイントへ到着し、まだ明るい中でアンカリングしてクルーが生簀の中のイワシを辺り一面に撒いて魚を寄せてくれる。

 

 

アングラー達は老いも若きも、ネエチャンもオバチャンも一斉に我先争って仕掛けを投入する。

 

 

まあ、釣りとしては追求すればそれなりの奥は必ずあるだろうが、とっかかりに特別な知識もテクニックも要らず、針にイワシを刺して垂らしていればほぼOKの簡単な釣りなので、ここでも解説などは要らぬ話だ(笑)

 

とにかく手軽でひたすら楽しい釣りなので、人気の高さが頷けるサンダウンスペシャルだった。(注・写真は通常のデイゲームでの釣果です)

 

 

ともあれ、俺の北米の釣りは、先に述べた3人の日本人アングラーの導きで充実し始めた。

 

もちろん、良しとするスタイルもソウでないものもあったが、後の自分の釣りに大いに参考になったわけだ。

 

 

壮大な太平洋や、荒れた荒野の中にポツンと出現する湖や、当時の友の顔を振り返りながら思い出を綴り、夜毎の夢路に出港するとするか・・・

 

 

Written by leon